抜裏
ぬけうら
名詞
標準
文例 · 用例
…… 軽い雨で、もう面を打つほどではないが、引緊めた袂重たく、しょんぼりとして、九十九折なる抜裏、横町。
— 泉鏡花 『第二菎蒻本』 青空文庫
渠等は社の抜裏の、くらがり坂とて、穴のような中を抜けてふとここへ顕れたが、坂下に大川一つ、橋を向うへ越すと、山を屏風に繞らした、翠帳紅閨の衢がある。
— 泉鏡花 『茸の舞姫』 青空文庫
別に案ずるまでもない、同町の軒並び二町ばかり洲崎の方へ寄った角に、浅草紙、束藁、懐炉灰、蚊遣香などの荒物、烟草も封印なしの一銭五厘二銭玉、ぱいれっと、ひーろーぐらいな処を商う店がある、真中が抜裏の路地になって合角に格子戸|造の仕舞家が一軒。
— 泉鏡花 『葛飾砂子』 青空文庫
彼は抜裏と間違えて袋の口へ這入り込んだ結果、好んで行き悩みの状態に悶えているのでは無かろうかと、自分で自分の判断を危ぶみ出した。
— 夏目漱石 『彼岸過迄』 青空文庫
それから黒猫やリンデンや抜裏なんぞの寄席にちょいちょい這入って覗いて見た。
— オシップ・ディモフ Ossip Dymoff 『襟』 青空文庫
柳営の内証向きには、ふとした抜裏がござって、当節、権勢の流行神の方へ、段々と手入れをいたせば、およそならぬということはないよし。
— 久生十蘭 『無惨やな』 青空文庫
雲がこっちへばかり、たぐまっちまって、えらくゴタゴタしているから、これから雲の中の道をさがすつもりなんです……空にだって、抜裏もあれば露路もあるってわけで、その辺のところは、心得たものですから、安心していらしてください」 ひとりでしゃべりまくって、操縦室へ帰って行った。
— 久生十蘭 『雲の小径』 青空文庫
ほんの拔裏で、ほとんど學校がよひのほか、用のない路らしいが、それでも時々人通りがある。
— 泉鏡太郎 『木菟俗見』 青空文庫