黒紋
くろもん
名詞
標準
文例 · 用例
」 先刻から、ただ柳が枝垂れたように行燈に凭れていた、黒紋着のその雪女が、りんとなって、両手で紳士の胸を圧した。
— 泉鏡花 『陽炎座』 青空文庫
黒紋付を着た宜い老婢が一人、小婢を一人|随へて、あとから静かに付き添つて来る、……やがて薄い涙で曇つた宗右衛門の眼に、拡大されて映つた二人の娘の姿が、静まり返つた人々の間を通つて、お辻の寝棺の傍に近づいた。
— 岡本かの子 『老主の一時期』 青空文庫
白百合の五つ紋の黒紋付できちょうめんに坐ったアンリー。
— 岡本かの子 『豆腐買い』 青空文庫
いつも黒紋付に、歩くときゅうきゅう音のする仙台平の袴姿であったが、この人は人の家の玄関を案内を乞わずに黙っていきなりつかつか這入って来るというちょっと変った習慣の持主であった。
— 寺田寅彦 『追憶の医師達』 青空文庫
若先生も典型的な温雅の紳士で、いつも優長な黒紋付姿を抱車の上に横たえていた。
— 寺田寅彦 『追憶の医師達』 青空文庫
黒紋付をちらと見たら蔦の紋であった。
— 寺田寅彦 『高知がえり』 青空文庫
金剛杖を丁と脇挟んだ、片手に、帯の結目をみしと取つて、黒紋着、袴の武士を俯向けに引提げた。
— 泉鏡花 『妖魔の辻占』 青空文庫
娘や家内は浴衣がけてゐるといふに、これはまた尚だ木綿の黒紋付の羽織に垢づいた袷で、以前の通り堅くるしい態をしてゐた。
— 三島霜川 『昔の女』 青空文庫