幻辞.com

名詞
1
標準
文例 · 用例
夢で愛人と別れたり、兩親と死別したり、それから特に、自分の避けがたい死や不運やを見たりする時ほど、眞に斷腸の悲しみといふ言葉を、文字通りに感じて歔することはない。
萩原朔太郎 青空文庫
彼は芭蕉よりもなお悲しく、夜半に独り起きてさめざめと歔するような詩人であった。
萩原朔太郎 郷愁の詩人 与謝蕪村 青空文庫
新古今集の和歌は、亡び行く公卿階級の悲哀と、その虚無的|厭世感の底で歔しているところの、艶に妖しく媚めかしいエロチシズムとを、暮春の空に匂う霞のように、不思議なデカダンスの交響楽で匂わせている。
萩原朔太郎 郷愁の詩人 与謝蕪村 青空文庫
夜汽車の暗爾たる車燈の影に、長女は疲れて眠り、次女は醒めて夢に歔す。
萩原朔太郎 氷島 青空文庫
群衆の中からも、歔の声が聞えた。
太宰治 走れメロス 青空文庫
とき折その可能を、ふと眼前に、千里|韋駄天、万里の飛翔、一瞬、あまりにもわが身にちかく、ひたと寄りそわれて仰天、不吉な程に大きな黒アゲハ、もしくは、なまあたたかき毛もの蝙蝠、つい鼻の先、ひらひら舞い狂い、かれ顔面蒼白、わなわなふるえて、はては失神せんばかりの烈しき歔
太宰治 創生記 青空文庫
その日も、私は、市川の駅へふらと下車して、兄いもうと、という活動写真を見もてゆくにしたがい、そろそろ自身|狼狽、歯くいしばっても歔の声、そのうちに大声出そうで、出そうで、小屋からまろび出て、思いのたけ泣いて泣いて泣いてから考えた。
――(生れて、すみません。) 二十世紀旗手 青空文庫
男も一緒に、たしかに、歔の声をもらしていた。
太宰治 火の鳥 青空文庫