暗ぼったい
くらぼったい
形容詞
標準
文例 · 用例
駿河台の暗ぼったい旗本屋敷の長屋から移転したので、タシカ今の神田キネマの辺であった。
— 内田魯庵 『美妙斎美妙』 青空文庫
その上、家のすぐ裏のわずかな空地にもってきて、外からは見えなかったが、納屋のようなものが立っていて、家全体がいかにも暗ぼったい感じがするので、「あれは何なの?
— 堀辰雄 『朴の咲く頃』 青空文庫
池の縁をまわって、南下りになった櫟林の中を行くと、はるかむこうの芝生の端に、マンサルドのついた宏壮な洋館の屋根が見え、それを見おろすような位置に、檐の低い、暗ぼったい柾屋がたっていた。
— 久生十蘭 『西林図』 青空文庫
七戸から北は、砂丘まじりの地表が茫漠とひろがり、屋根に石を載せた暗ぼったい家が、二里に三軒、三里に二軒というぐあいにバラ撒かれ、そのむこうに錆色の荒くれた海が見える。
— 久生十蘭 『ボニン島物語』 青空文庫
今日の花試合に出す『明月院』ってのが、そこに伏せてあるが、見たかったら、のぞかせてやろう」 去年の落葉が冬のままに堆高くたまった裏山の斜面をあがって行くと、柊の大木の下に、久しく閉めきったままになっているらしい暗ぼったい小屋があった。
— 久生十蘭 『春の山』 青空文庫
暗ぼったい違棚のあったあたりに、ニス塗の扉が見える。
— 久生十蘭 『我が家の楽園』 青空文庫
「髪はいいけど、そのドレス、すこし暗ぼったい感じね……ほかのは、ないの」「では、これでワン・ステージ、終らせていただきます。
— 久生十蘭 『あなたも私も』 青空文庫
まもなく阪井と細君が出てきましたが、十一年前にロンドンへ来たころは福々しいくらいに肥っていたのがとげとげと痩せ、流動的な明るい快活さも、充ち足りたような寛闊さもすっかり消失して、学生時代のあの暗ぼったい皮肉なようすにかえっていました。
— 久生十蘭 『ハムレット』 青空文庫