思い遣り
おもいやり
名詞
標準
文例 · 用例
むす子にその思い遣りが持てるのは、もはやかの女自身が巴里の魅力に憑かれている証拠だった。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
慈悲深い男は、家外の寒さを思い遣り乍ら室内のストーヴの火に暖を採り、椅子にふかふかと身を埋めて静に読書して居りました。
— 岡本かの子 『慈悲』 青空文庫
そのところを伺えると大変都合がいいんですけれど」老侍女「どうでございますかわたくしには、……ただ、下々には思い遣りの深い良い奥様でございます」妙な美男「それだけじゃ、何の足しにもなりませんね。
— 岡本かの子 『或る秋の紫式部』 青空文庫
そこまで余裕のある思い遣りが、二人の間につくかどうかが疑問で、あるとき、お涌の髪に手を入れてやり乍ら訊いた。
— 岡本かの子 『蝙蝠』 青空文庫
あまり職掌を重んじて、苛酷だ、思い遣りがなさすぎると、評判の悪いのに頓着なく、すべ一本でも見免さない、アノ邪慳非道なところが、ばかにおれは気に入ってる。
— 泉鏡花 『夜行巡査』 青空文庫
おれもまた、口へ出したことはないが、心では、心では、実におりゃもう、お香、おまえはその思い遣りがあるだろう。
— 泉鏡花 『夜行巡査』 青空文庫
一青年が力を貸して車を押したのは、いわゆる思い遣りの心とでも言おうか、仁恕の心とでも言おうか、何にせよ或る心の発動現象であって、儒学者的に称賛するには値しないが、その行為は決して不良でもなく凶悪でもない。
— 幸田露伴 『努力論(現代訳)』 青空文庫
三造は、子供心にも、思い遣りのない伯父の軽率を、許しがたいものに思い、まるで自分が圭吉を辱しめでもしたかのような「すまなさ」と「恥ずかしさ」とを感じ、しばしは、顔を上げられない位であった。
— 中島敦 『斗南先生』 青空文庫