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田翁

でんおう
名詞
1
標準
文例 · 用例
石井翁は綿服ながら小ザッパリした衣装に引きかえて、この老人河田翁は柳原仕込みの荒いスコッチの古洋服を着て、パクパク靴をはいている。
国木田独歩 二老人 青空文庫
」と石井翁はじろじろ河田翁の様子を見ながら聞いた。
国木田独歩 二老人 青空文庫
」「イヤこれはどうも」と河田翁は遠慮なく一本ぬき取って、石井翁から火を借りた。
国木田独歩 二老人 青空文庫
この二老人は三十歳前後のころ、ある役所で一年余り同僚であったばかりでなく、石井の親類が河田の親類の親類とかで、石井一|家では河田翁のうわさは時おり出て、『今何をしているだろう』『ほんとにあんな気の毒な人はない』など言われていたのである。
国木田独歩 二老人 青空文庫
「イヤとてもお話にもなんにも……」 これが河田翁持ち前の一つで、人に対すると言いたいことも言えなくなり、つまらんところに自分を卑下してしまうのである。
国木田独歩 二老人 青空文庫
」「あの時、あなたが、一杯きげんで『雨の夜に日本近くねぼけて流れこむ』をうたって踊った時はおもしろかったがね、ハ、ハヽヽヽヽ」「ハヽヽ」といっしょに笑ったぎり、河田翁は何も言わない。
国木田独歩 二老人 青空文庫
三十の年に恩人の無理じいに屈して、養子に行き、養子先の娘の半気違いに辛抱しきれず、ついに敬太郎という男の子を連れて飛びだしてしまい、その子は姉に預けて育ててもらう、それ以後は決して妻帯せず、純然たるひとり者で、とうとう六十余歳まで通して来たのが河田翁の一生である。
国木田独歩 二老人 青空文庫
人がもし壮年の時から老人の時まで、純然たる独身生活すなわち親子兄弟の関係からも離れてただ一人、今の社会に住むなら並み大抵の人は河田翁と同様の運命に陥りはせまいか、老いてますます富みかつ栄えるものだろうか。
国木田独歩 二老人 青空文庫