昂進
こうしん
名詞
標準
文例 · 用例
只ごうっと吹く風の音、ばらばらっと板屋を打つ雨の音に許り神経は昂進るのである。
— 伊藤左千夫 『大雨の前日』 青空文庫
つかれた生涯のあぢない晝にも孤獨の暗い部屋の中にもしぜんとやはらかく そよげる窓の光はきたるいきほひたかぶる機能の昂進そは世に艶めけるおもひのかぎりだ勇氣にあふれる希望のすべてだ。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
我我の情緒が昂進して、何かの強い詩的感動に打たれる時、自然我我の言葉には抑揚がついてくる。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
何ともいへない樂しい世界へ、今少しのことで手が屆きさうに思はれるときの快よい焦燥と、そのぞくぞくするやうな心臟のよろこび、そのほつとする心もち、甘つたるい悲しさ、しぜんと涙ぐむやうになる情緒の昂進。
— 萩原朔太郎 『散文詩・詩的散文』 青空文庫
一兵卒の死の原因にしても、長途の行軍から持病の脚気が昂進したという程度で、それ以上、その原因を深く追求しないで、主人公の恐ろしい苦しみをかきながら、作者は、ある諦めとか運命とかいうものを見つけ出そうとしている。
— 黒島傳治 『明治の戦争文学』 青空文庫
それは脳に徐々の出血があって、それがだんだんに蓄積して内圧を増す、それにつれて脈搏がはじめはだんだん昂進して百二十ほどに上がるが、それでも当人には自覚症状はない。
— 寺田寅彦 『鎖骨』 青空文庫
照子は心気|昂進して、あえてものをも言わざりし。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
そしてこの日も電車が新百合ケ丘に近づくに連れオレは若干の心悸の昂進を抑えられないでいたのだが、その主因がパフォーマンスへの期待やスクエアー・アレルギー以外にあることはオレ自身には明らかだった。
— 富田倫生 『青空のリスタート』 青空文庫