把握力
はあくりょく
名詞
標準
文例 · 用例
彼の聡明な物象の把握力、日本人特異の単純化と図案化。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
日本にも偶然的なやり方で効果をねらつてゐる画家も少くないが、この偶然的方法の反覆をルオー程に頑張つてやるでもなし、やつたとしてもこれらの偶然性が、一つの必然性に転化した途端の瞬間的な把握力を作者自身がもたないから、だらしなく無駄な偶然性を追ひ廻すだけである。
— 美術論・画論 『小熊秀雄全集−19−』 青空文庫
そして、把握力が加わってくるらしく、毛布を掴んだまま、俊太郎の身体ぐるみ、じりじりと、自分の方へ引寄せて、両手で、胸を抱くように――右手は、藁蒲団ぐるみ、強烈な力で、引寄せかけた。
— 直木三十五 『ロボットとベッドの重量』 青空文庫
コントにふさわしい断面もしくは刹那において人生をとらえる俊敏な把握力とこれを軽快に表現する表現力とをそなえた作家が日本にはまだない。
— 平林初之輔 『ルヴエルの『夜鳥』』 青空文庫
彼女の把握力が、生涯の力を籠めて、彼の手の中へ入り込んで来た。
— 横光利一 『花園の思想』 青空文庫
彼女の把握力は、刻々落ちていく顎の動きと一緒に、彼の掌の中で木のように弛んで来た。
— 横光利一 『花園の思想』 青空文庫
例えば「真珠の首飾」にしても、有りそうな事件を取り扱い乍ら、拵え物としか思われないのは、その把握力が弱いからで、キメの荒い散文的の描写は、そうでなくてさえ非審美的の、探偵小説というものを、一層ぞんざいに墜し入れている。
— 国枝史郎 『日本探偵小説界寸評』 青空文庫
これらは平凡なことですけれど、しかし平凡さが次第にリアリスティックな把握力をつよめて来ているということの興味ある現象だと思います。
— 一九四一年(昭和十六年) 『獄中への手紙』 青空文庫