炊烟
炊烟
名詞
標準
文例 · 用例
夕陽西に傾いて戸々の炊烟漸く上るの時、一群の村童、奇異の旅客を纏ふて来る。
— 北村透谷 『客居偶録』 青空文庫
昨日仰ぎし惠那岳は右に、美濃一國の山々は波濤の打寄するが如く蜿蜒と連り亙りて、低き處には高原を披き、凹き處には溪流を駛らせ、村舍の炊烟、市邑の白堊、その眺望の廣濶なる、殆ど譬ふべき言葉を知らず。
— 田山花袋 『秋の岐蘇路』 青空文庫
後に鳴蟲の山を顧み、前に神橋の朱欄を見、疾走して炊烟梟々たる鉢石街を横ぎり、一道の杉影漸く日光の停車場に達す。
— 田山花袋 『日光山の奧』 青空文庫
人家稀疎、炊烟迷離、那須野原中の一小邑たるに過ぎず。
— 田山花袋 『日光山の奧』 青空文庫
その麓は則川治の温泉場にて、二三人の人家、炊烟の斜に渦上するを認む。
— 田山花袋 『日光山の奧』 青空文庫
一例を挙ぐれば中洲と箱崎町の出端との間に深く突入っている堀割はこれを箱崎町の永久橋または菖蒲河岸の女橋から眺めやるに水はあたかも入江の如く無数の荷船は部落の観をなし薄暮風収まる時|競って炊烟を棚曳かすさま正に江南沢国の趣をなす。
— 一名 東京散策記 『日和下駄』 青空文庫
一例を挙ぐれば中州と箱崎町の出端との間に深く突入つてゐる堀割は此れを箱崎町の永久橋または菖蒲河岸の女橋から眺めやるに水は恰も入江の如く無数の荷船は部落の観をなし薄暮風|収まる時|競つて炊烟を棚曳かすさま正に江南沢国の趣をなす。
— 永井荷風 『水 附渡船』 青空文庫
革命の風雲|未だ天下を動かすに足らずといえども、その智勇弁力ある封建社会の厄介物たる――小数人士の脳裡には、百万の人家|簇擁して、炊烟東海の天を蔽う、堂々たる大江戸も、浅茅生る武蔵野の原に過ぎず。
— 徳富蘇峰 『吉田松陰』 青空文庫