隠約
いんやく
名詞
標準
文例 · 用例
何等か隠約の中に脈を通じて、別の世界に相通ずるものあるがごとくならずや。
— 泉鏡花 『遠野の奇聞』 青空文庫
この男の住居が黒島で、そこへその晩泊りますが、心あての俳友は大病、思いがけないその兄の内へともなわれる……何となく人間の離合集散に、不思議な隠約があるように思われて。
— 泉鏡花 『河伯令嬢』 青空文庫
隠約とか省筆とかだ。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
夜すがら両個の運星|蔽ひし常闇の雲も晴れんとすらん、隠約と隙洩る曙の影は、玉の緒長く座に入りて、光薄るる燈火の下に並べるままの茶碗の一箇に、小き蛾有りて、落ちて浮べり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
ユーモリストに到りては自ら其趣を異にすれども、之とても亦た隠約の間に情熱を有するにあらざれば、戯言戯語の価直を越ゆること能はざるべし。
— 北村透谷 『情熱』 青空文庫
しかし「コロンバ」は隠約の間に彼自身を語ってはいないであろうか?
— 芥川龍之介 『侏儒の言葉』 青空文庫
が、更に微妙なことには第三に『それ』の芸術的価値さえ、隠約の間に否定しています。
— 芥川龍之介 『侏儒の言葉』 青空文庫
我邦では西洋の事物を持って来てもその運用法を知らんから随分|隠約の間に鉛毒を受けている人があるかもしれない。
— 春の巻 『食道楽』 青空文庫