狽
狽
名詞
標準
文例 · 用例
千代ちやんひどく不快でもなつたのかい福や薬を飲まして呉れないか何うした大変顔色がわろくなつて来たおばさん鳥渡と良之助が声に驚かされて次の間に祈念をこらせし母も水初穂取りに流し元へ立ちしお福も狼狽敷枕元にあつまればお千代閉ぢたる目を開らき。
— 樋口一葉 『闇桜』 青空文庫
皆は故意に会話をはずませて、過失に狼狽している主人の様子を、少しも見ないように勉めていた。
— 萩原朔太郎 『ウォーソン夫人の黒猫』 青空文庫
その「予想」が現今大概の人の場合に稀薄なのであるし、これは多分「人間像」を見失ふ、つまり「おのづと感じられる面白味」といふものの離散であらうし、それは意志だけの如き意志、謂はば周章狼狽の結果でもあらう。
— 中原中也 『撫でられた象』 青空文庫
彼は自ら進んでこの条件を、認容したのだといったふうに、見せかけたかったが、あまりにも狼狽した彼にはその方法もできなかった。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
」「いやじゃないが、」魚容は狼狽して、「乃公にはちゃんと女房があります。
— ――新曲聊斎志異―― 『竹青』 青空文庫
魚容は大いに狼狽して、「それは、ひどい。
— ――新曲聊斎志異―― 『竹青』 青空文庫
質問というものは、たいてい愚問にきまっているものだし、また、先輩の家へ押しかけて行って、先輩を狼狽赤面させるような賢明な鋭い質問をしてやろうと意気込んでいる奴は、それこそ本当の馬鹿か、気違いである。
— 太宰治 『散華』 青空文庫
私だけでも落ちついて、立派な指図をしたいと思ったのだが、やはり私は、あまりの事に顛倒し、狼狽し、おろおろしてしまって、かえってHたちに軽蔑されたくらいであった。
— 太宰治 『東京八景』 青空文庫