尾を引く
おをひく
表現動詞-五段-カ行
標準
to leave a trail
文例 · 用例
キィーキィーの櫓声となめらかな水面に尾を引く舟足と、立ってる老爺と座しておる予とが、わずかに消しのこされている。
— 伊藤左千夫 『河口湖』 青空文庫
乾燥室は共同出資で建てることによつて、負擔を輕くするやうにしてゐるが、自分で一室建て増さねばならぬやうな時には、費用は少くとも百五十圓はかかり、それは年六分ぐらゐの利子で無理して借り入れられ、あとあとまでも長く尾を引く。
— 島木健作 『生活の探求』 青空文庫
G師は、ともかく一應別居して二人ともG師の信念を徹底的に聽き、その上で、うはずつた末梢的な興奮からでなしに、眞に即く縁のものなら即き、離る縁のものなら離るべしといふのであつたが、しかし、長く尾を引くに違ひない後に殘る悔いを恐れる餘裕よりも、二人の一日の生活は迫りに迫つてゐたのである。
— 嘉村礒多 『崖の下』 青空文庫
と、体が細まりくびれ、煙のように朦朧となり、やがてあたかも尾を引くように、壺の中に入って行った。
— 国枝史郎 『大捕物仙人壺』 青空文庫
それもモロー彗星が近づいたせいだとあって、人々は、夕暮間もなく、西の地平線の上に、うすぼんやりとあやしい光の尾を引くモロー彗星のすがたを、気味わるく、そうして、また恐しく眺めつくすのであった。
— 海野十三 『火星兵団』 青空文庫
いいかね、一度行われたことは、後まで尾を引くものだ。
— 豊島与志雄 『田原氏の犯罪』 青空文庫
話は数年前のことであったが、未来長く尾を引くもののように感じられた。
— 豊島与志雄 『反抗』 青空文庫
大地をゆるがす砲車のきしりと、ビュン、ビュンと絶え間なく空中に尾を引くような銃弾の音と、あらしのごとくそばを過ぎて、いつしか遠ざかる馬蹄のひびきとで、平原の静寂は破られ、そこに生えている紫の花と白い花とは、思わず、恐怖にふるえながら、顔を見合ってささやいたのでした。
— 小川未明 『戦友』 青空文庫