祀
祀
名詞
標準
文例 · 用例
輪※と樹木輪※の暦をかぞへてみればわたしの過去は魚でもない 猫でもない 花でもないさうして草木の祭祀に捧げる 器物や瓦の類でもない金でもなく 蟲でもなく 隕石でもなく 鹿でもないああ ただひろびろとしてゐる無限の「時」の哀傷よ。
— 萩原朔太郎 『定本青猫』 青空文庫
それらの多くの神神たちは、野道の寂しい辻のほとりや、田舍の小さな森の影や、景色の荒寥とした山の上や、或は裏街の入り込んでゐる、貧乏な長屋の露路に祀られて居り、人間共の侘しげな世界の中で、しづかに情趣深く生活して居る。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫
すべての農民等は、邸の中に氏神と地祖神を祭つて居り、田舍の寂しい街道には、行く所に地藏尊と馬頭觀音が安置され、暗い寂しい竹藪の陰や、田の畔の畦道毎には、何人もかつてその名を知らないやうな、得體のわからぬ奇妙な神神が、その存在さへも氣付かれないほど、小さな貧しい祠で祀られてゐる。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫
「神」といふ言葉が、宗教裁判のあの過酷を生んだ欧羅巴に於て、則ち神自体よりも神を祀る人間習俗の中に屡々不幸を招来したことがあつたといふので「神」を厭ふといふのならまだ分るとしても、日本に於て「神」を何故に厭ふ者があるのであるか?
— 中原中也 『我が詩観』 青空文庫
秋田附近から五銖銭が出土したことがあり、東北には漢文帝武帝を祀つた神社があつたらしいのは、いづれも直接の交通が大陸とこの地方との間に行はれたことを推測せしめる。
— 太宰治 『津軽』 青空文庫
別段、こだわるわけではありませんが、作州の津山から九里ばかり山奥へはいったところに向湯原村というところがありまして、そこにハンザキ大明神という神様を祀っている社があるそうです。
— 太宰治 『黄村先生言行録』 青空文庫
あんまり人間をとって食べるので、或る勇士がついに之を退治して、あとの祟りの無いように早速、大明神として祀り込めてうまい具合におさめたという事が、その作陽誌という書物に詳しく書かれているのでございます。
— 太宰治 『黄村先生言行録』 青空文庫
しかし、この個人的な経験はおそらく一般的には応用が利かないであろうし、ましてや、科学の神殿を守る祭祀の司になろうと志す人、また科学の階段を登って栄達と権勢の花の山に遊ぼうと望む人達にはあまり参考になりそうに思われないのである。
— 寺田寅彦 『科学に志す人へ』 青空文庫