扼
扼
名詞
標準
文例 · 用例
陸は南北の中間に位置し、海には、渤海の南半を抑制し、一呼して立てば、天津、北京の形勢を扼することが出来る。
— 黒島傳治 『武装せる市街』 青空文庫
古老は眉を顰め、壯者は腕を扼し、嗚呼、兒等不祥なり。
— 泉鏡太郎 『蛇くひ』 青空文庫
」 といまは苛てる状にて、はたとばかり掻退けたる、雪は辷り落ちて、三ツ四ツに砕けたるを、少年のあなやと拾ひて、拳を固めて掴むと見えし、血の色颯と頬を染めて、右手に貴女の手を扼り、ものをも言はで引立てつ。
— 泉鏡花 『紫陽花』 青空文庫
看護員に迫害を加ふべき軍夫らの意気は絶頂に達しながら、百人長の手を掉りて頻りに一同を鎮むるにぞ、その命なきに前だちて決して毒手を下さざるべく、予て警むる処やありけん、地踏※蹈みてたけり立つをも、夥間同志が抑制して、拳を押へ、腕を扼して、野分は無事に吹去りぬ。
— 泉鏡花 『海城発電』 青空文庫
一めん波が菱立って来た放水路の水面を川上へ目を遡らせて行くと、中川筋と荒川筋の堺の堤の両端を扼している塔橋型の大水門の辺に競走のような張りを見せて舟々は帆を上げている。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
逸作は一寸腕を扼してかの女を払い退けるようにして読み続けた。
— 岡本かの子 『かの女の朝』 青空文庫
』と悲憤の腕を扼すと、夫人の淋しき顏は私に向つた、沈んだ聲で『いえ、誰人も命の助かりたいのは同じ事でせう。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
いつか海洋博物館での通俗講演会でペンクが青島の話をしたとき、かの地がいかに地の利に富むかということを力説し、ここを占有しているドイツは東洋の咽喉を扼しているようなものだという意味を婉曲に匂わせながら聴衆の中に交じっている日本留学生の自分の顔を見てにこにこした。
— 寺田寅彦 『ベルリン大学(1909-1910)』 青空文庫