荷箱
にばこ
名詞
標準
文例 · 用例
東京で震災前までは深川へんで見かけたことのあるあの定斎屋と同じようなものであったらしいが、しかし枇杷葉湯のあの朱塗りの荷箱とすがすがしい呼び声とには、あのガッチンガッチンの定斎屋よりもはるかに多くの過去の夢と市井の詩とを包有していたような気がする。
— 寺田寅彦 『物売りの声』 青空文庫
柿 郷里の家から荷箱が一つ送りとどけられた。
— 薄田泣菫 『独楽園』 青空文庫
行商人、炎天に赤帽の荷を担い歩み憊れて猴多き樹下に止まり、荷箱を開いて赤帽一つ取り出し冒って眠るを見た猴ども、樹より降りて一々赤帽を冒り樹に登る。
— 猴に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
毎朝一葉は荷箱を背負って問屋の買い出しに出かけ、五厘六厘の客も追々ふえて、六十銭一円と売りあげもあるようになった。
— 宮本百合子 『婦人と文学』 青空文庫
荒物屋をひらくときの心機一転して裾を高々とはしょりあげたような気分、荷箱をはじめて背負ってみて案外に重きものなりとさらりとしている生活の感情。
— 宮本百合子 『婦人と文学』 青空文庫
甘酒屋のお爺さんが、赤塗りの荷箱をおっぽりだして、塀のかげへ走りこんだかと思うと、すぐその顔が築地塀の上に現われた。
— こけ猿の巻 『丹下左膳』 青空文庫
」「担ぎの荷箱を蔵へ預けといて、毎朝自身で出してお店へ廻って味噌を仕入れるのが、親分の前だがあっしとここの店との約束でげしてね。
— 三つの足跡 『釘抜藤吉捕物覚書』 青空文庫
――夕方、沢山荷箱を積んである蔭で、私は人に隠れて思い切り足を掻いていた。
— 林芙美子 『新版 放浪記』 青空文庫