紛紜
ふんうん
名詞
標準
文例 · 用例
愛に於ける一切の、葛藤、紛紜、失望、自殺、疾病等あらゆる恐るべき熟字は皆婚姻のあるに因りて生ずる処の結果ならずや。
— 泉鏡花 『愛と婚姻』 青空文庫
この言をしてもし平生にあらしめば必ず一条の紛紜を惹き起こすに相違なきも、病者に対して看護の地位に立てる者はなんらのこともこれを不問に帰せざるべからず。
— 泉鏡花 『外科室』 青空文庫
しかし保胤は夙くより人間の紛紜にのみ心は傾かないで、当時の風とは言え、出世間の清寂の思に※が染みていたので、親王の御為に講ずべきことは講じ、訓えまいらすべきことは訓えまいらせても、其事一わたり済むと、おのれはおのれで、眼を少し瞑ったようにし、口の中でかすかに何か念ずるようにしていたという。
— 幸田露伴 『連環記』 青空文庫
民事訴訟の紛紜、及び余り重大では無い、武士と武士との間に起ったので無い刑事の裁断の権能をもそれに持たせた。
— 幸田露伴 『雪たたき』 青空文庫
心|長閑にこの春光に向かわば、詩人ならざるもしばらく世俗の紛紜を忘れうべきを、春愁堪え難き身のおとよは、とても春光を楽しむの人ではない。
— 伊藤左千夫 『春の潮』 青空文庫
筋はもう忘れて了ったが、何でも自分を主人公にして、雪江さんが相手の女主人公で、紛紜した挙句に幾度となく姦淫するのを、あやふやな理想や人生観で紛らかして、高尚めかしてすじり捩った物であったように記憶する。
— 二葉亭四迷 『平凡』 青空文庫
不思議なことに今朝になってみると、田舎の兄のやっている陶器会社が破産状態に陥った時、相談を持ちかけられ、郁子を説得したうえ、万に近い金をようやく融通して急場を救ったことがあり、後に紛紜が起きて困ったことがあったが、結局解決がつかずじまいであったことが、今朝の清澄な心にふと思い出された。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
お庄には深い事情の解りようもなかったが、牛込の自分の弟のところに母子厄介になっている親爺の添合いや子供のことから、時々起る紛紜が、その折も二人の間に起っていた。
— 徳田秋声 『足迹』 青空文庫