聞き違え
ききちがえ
名詞
標準
文例 · 用例
旧時代のハイカラ岸田吟香の洋品店へ、Sちゃんが象印の歯みがきを買いに行ったら、どう聞き違えたものか、おかしなゴム製の袋を小僧がにやにやしながら持ち出したと言って、ひどくおかしがって話したことを思い出す。
— 寺田寅彦 『銀座アルプス』 青空文庫
(付記) 陸地測量部の作業に関する項は知友技師|梅本豊吉氏の談話によったが、もし誤記があったらそれは筆者の聞き違えである。
— 寺田寅彦 『地図をながめて』 青空文庫
しかし、聞き違え、覚え違いがどれだけあるか、今となってはもうそれを確かめる道はなくなってしまったわけである。
— 寺田寅彦 『B教授の死』 青空文庫
私のお返事をどう聞き違えて申し上げたのだろう」 尚侍は機嫌を悪くしたが、「いいかげんな口実を作りましてお帰しいたすことなどはもったいないことでございましょう」 と中納言の君は言って、無理な計らいまでして院を座敷へ御案内してしまった。
— 若菜(上) 『源氏物語』 青空文庫
珍しいお手紙を拝見いたしましたことは、御病気をお案じ申し上げるほうから申しても非常にうれしいことでしたが、おとがめを受けましたことにつきましては何かお聞き違えになったのではないかと思われるのでございます。
— 夕霧一 『源氏物語』 青空文庫
もっとも、激しい嵐で古い家が絶えず軋んでおりましたから、ひょっとすると、聞き違えたのかもしれません。
— THE ADVENTURE OF THE SPECKLED BAND 『まだらのひも』 青空文庫
それは先ほど呼ばれた時のそれに比べると、聞き違えるほど美しい声だった。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
相手が冗談を言っているのでもなく、気が狂っているのでもなく、また自分が聞き違えをしているのでもないことを確かめると、彼はほとんど恐怖に近い狼狽を示して、吃りながら叫んだ。
— 中島敦 『名人伝』 青空文庫