片割れ月
かたわれづき
名詞
標準
文例 · 用例
この時雨は全く止み、片割れ月が蒼々と空に懸かっておりましたなれど、名に負う魔所の硫黄ヶ滝へ、かかる深夜に何者なれば集まりおるぞと不思議に思い、足音を忍ばせ近寄り行き木蔭より窺い見ましたところ……」「忠義者の右衛門が、紋十郎の配下の者に縛められておったのじゃな?
— 国枝史郎 『蔦葛木曽棧』 青空文庫
定かならぬ影が青ざめた呪いの片割れ月の下で踊っているのを見つめながら、――かの忌むべき、ひらかれた墓の内部の最深淵から上がって来る声を、はっきりと聞きました。
— 西尾正 『墓場』 青空文庫
さきほどから猿は、片割れ月のかげを浮かべた淵の面を、丸い大きな眼で覗き込んでいる。
— 佐藤垢石 『岩魚』 青空文庫
日記の断片、二月十日の条には、「雪晴れの片割れ月に、白い木や堂の屋根が、くっきりと、黒い空に出ている処、古い芝居の書割りを思わす。
— 中村清太郎 『ある偃松の独白』 青空文庫
しかしあの夜の満月とちがって、今夜は片割れ月だ。
— 江戸川乱歩 『月と手袋』 青空文庫
まがまがしい片割れ月だ。
— 江戸川乱歩 『月と手袋』 青空文庫
図書 針ばかり片割月の影もささず、下に向えば真の暗黒。
— 泉鏡花 『天守物語』 青空文庫
」 かくて酒肴の用足しから帰って来た女房は、その手巾を片襷に、愛吉が背後へ廻って、互交に睦じく語らいながら、艶なる頸にきらきらと片割月のきらめく剃刀。
— 泉鏡花 『式部小路』 青空文庫