畝々
畝々
名詞
標準
文例 · 用例
佐内坂の崖下、大溝通りを折込んだ細路地の裏長屋、棟割で四軒だちの尖端で……崖うらの畝々坂が引窓から雪頽れ込みそうな掘立一室。
— 泉鏡花 『菎蒻本』 青空文庫
畝々と巻込めてあった、そいつが、のッそり、」と慌しい懐手、黒八丈を襲ねた襟から、拇指を出して、ぎっくり、と蝮を拵えて、肩をぶるぶると遣って引込ませて、「鎌首を出したはどうです、いや聞いても恐れる。
— 泉鏡花 『南地心中』 青空文庫
辿る姿は、松にかくれ、草にあらわれ、坂に沈み、峰に浮んで、その峰つづきを畝々と、漆のようなのと、真蒼なると、赭のごときと、中にも雪を頂いた、雲いろいろの遠山に添うて、ここに射返されたようなお君の色。
— 泉鏡花 『縁結び』 青空文庫
斜違にこれを視めて、前歯の金をニヤニヤと笑ったのは、総髪の大きな頭に、黒の中山高を堅く嵌めた、色の赤い、額に畝々と筋のある、頬骨の高い、大顔の役人風。
— 泉鏡花 『露肆』 青空文庫
それからこうあっちに、畝々した線が引張ってあるだろう、これはね、ここから飛騨の高山の方へ行ったんだよ。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
それに、藁屋や垣根の多くが取払われたせいか、峠の裾が、ずらりと引いて、風にひだ打つ道の高低、畝々と畝った処が、心覚えより早や目前に近い。
— 泉鏡花 『星女郎』 青空文庫
世間は、春風に大きく暖く吹かるる中を、一人陰になって霜げながら、貧しい場末の町端から、山裾の浅い谿に、小流の畝々と、次第|高に、何ヶ寺も皆日蓮宗の寺が続いて、天満宮、清正公、弁財天、鬼子母神、七面大明神、妙見宮、寺々に祭った神仏を、日課のごとく巡礼した。
— 泉鏡花 『瓜の涙』 青空文庫