広蓋
ひろぶた
名詞
標準
文例 · 用例
亭主帳場から背後向きに、日和下駄を探って下り、がたりびしりと手当り強く、そこへ広蓋を出掛ける。
— 泉鏡花 『歌行燈』 青空文庫
宮が平生に違って寂しそうに手紙を読んでおいでになり、漆器の広蓋などが置かれてあるのを、院はお心に不思議に思召されたが、それは御寺から送っておつかわしになったものだった。
— 横笛 『源氏物語』 青空文庫
この竹の子の置かれた広蓋のそばへ、何であるともわからぬままで若君は近づいて行き、忙しく手で掻き散らして、その一つには口をあてて見て投げ出したりするのを、院は見ておいでになって、「行儀が悪いね。
— 横笛 『源氏物語』 青空文庫
そして部屋のすみにある生漆を塗った桑の広蓋を引き寄せて、それに手携げや懐中物を入れ終わると、飽く事もなくその縁から底にかけての円味を持った微妙な手ざわりを愛で慈しんだ。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
ちょっと御免くださいよ」そういって、葉子はあでやかに上体だけを後ろにひねって、広蓋から紋付きの羽織を引き出して、すわったままどてらと着直した。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
島田髷の女が広蓋に入れて料理を搬んで来てテーブルの前に置いた。
— 田中貢太郎 『港の妖婦』 青空文庫
もう一切の物を二階のあがり口へ持って来てあると見えて、こんろの後から広蓋に入れた肉や銚子などを持って来た。
— 田中貢太郎 『雨夜続志』 青空文庫
食ひ荒した炬燵の上の赤い広蓋に、電燈が反射してゐる。
— 林芙美子 『浮雲』 青空文庫