待ち惚け
まちぼうけ
名詞
標準
文例 · 用例
十五 古市二日といふ村の伊勢參りの掟を破つて、三日も流連したので、日取りの狂ひは後の道中で取り返すから、下向の迎ひを平井明神の境内に待ち惚けさせる心配はないが、苦勞なのは、めい/\の懷中であつた。
— 上司小劍 『石川五右衞門の生立』 青空文庫
せっかくの生飯も、昭青年は苫船の中の美しい姫にやってしまうので、淵の鯉は、いつも待ち呆けです。
— 岡本かの子 『鯉魚』 青空文庫
待ち呆けをくっている女の子の姿勢で、ハンドバックからあの人の手紙をだして、読み直してみた。
— 織田作之助 『天衣無縫』 青空文庫
あ、軽部の奴また待ち呆けくわせやがったと、相手の人がぷりぷりしている頃、あの人は京阪電車に乗っている。
— 織田作之助 『天衣無縫』 青空文庫
だから、待ち呆けくわされてみると、なんだか一杯くわされたような気がするのである。
— 織田作之助 『天衣無縫』 青空文庫
私は慾深爺の顔つきで、今更、斯んな世にも滑稽な事件のために血道をあげてゐるものゝ、私にとつては金塊引上事業や鉱脈発見の苦心者と実にも同然なありのまゝの惨胆さに相違なく、どうやら旋風の絶え間もなく、このまゝこんな村で銑太郎の出現を待ち呆けたならば寒風に吹き殺されて了ひさうだつた。
— 牧野信一 『冬物語』 青空文庫
」「借りといつたつて、たつた三四両のことぢやないか――そんなことで、待ち呆けを喰はせられては堪らないぜ。
— 牧野信一 『泉岳寺附近』 青空文庫
引いて、後世紀に至りては、金の儲け損ひ、或ひは失恋、または期待するものゝ待ち呆け、落第、失職等々と、凡てアテの外れたる場合の形容辞として日常に使用されたり。
— 牧野信一 『タンタレスの春』 青空文庫