花影
はなかげ
名詞
標準
文例 · 用例
浴せ下ろす星降り、地上の火から空への火の伝騎のように、また、火勢を管で伸して注ぎかけるホースのように、数条の登り竜は、くきくきと天上に昇っては花影の余抹を劈んで満口の火粉を吹き、衰えては降り、また登って行きます。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
四 ある時庸三が庭へ降りて、そろそろ青みがかって来た叡山苔を殖やすために、シャベルをもって砂を配合した土に、それを植えつけていると、葉子は黝ずんだ碧と紫の鱗型の銘仙の不断着にいつもの横縞の羽織を着て、大きな樹一杯に咲きみちた白|木蓮の花影で二三日にわかに明るくなった縁側にいた。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
春院いたずらに更けて、花影欄にたけなわなるを、遅日早く尽きんとする風情と見て、琴を抱いて恨み顔なるは、嫁ぎ後れたる世の常の女の習なるに、麈尾に払う折々の空音に、琵琶らしき響を琴柱に聴いて、本来ならぬ音色を興あり気に楽しむはいよいよ不思議である。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
『花宵花影』(紐育万国博出品)のやうな作品では、我々は時代的に世代的に、これ以上の日本画の伝統と写実的手法の継承者といふものを、松林氏以外に他にもとめることが不可能だと思はせた作品であつた。
— 美術論・画論 『小熊秀雄全集−19−』 青空文庫
松林桂月氏の『春宵花影』は題材的にも桜花を扱つて適当であつた。
— 美術論・画論 『小熊秀雄全集−19−』 青空文庫
桂月の『春宵花影』や古径の『雪』のやうな写実的手段でなければ西洋人の悟性中心的な考への中に侵入することは不可能だと思ふ。
— 美術論・画論 『小熊秀雄全集−19−』 青空文庫
其詩には「名墅清遊二月春、島声花影午晴新」と云つてある。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
花影童女五十回忌に付、柏賢忠寺参詣。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫