憎体
にくてい
形容動詞
標準
文例 · 用例
」 と青い帽子をずぼらに被って、目をぎろぎろと光らせながら、憎体な口振で、歯磨を売る。
— 泉鏡花 『露肆』 青空文庫
「さあさあ御覧じろ、封が解るに従うて、お蝶さんの、あの顔が段々|弛んで来る処を、」「どういう訳だか、不思議なもんさね、」と源次郎は憎体な。
— 泉鏡花 『湯島詣』 青空文庫
と空嘯いて毛脛の蚊をびしゃりと叩く憎体面。
— 泉鏡花 『活人形』 青空文庫
指先を憎体な熊手のやうに曲げて凝つと、指先きばかりを視詰めた。
— 牧野信一 『冬の風鈴』 青空文庫
それより私は、好くもこう憎体な連中だけが寄集って自惚事を喋り合っているものだ、こんなところにあの一団が踏み込んだらそれこそ一網打尽の素晴しさで後くされがなくなるだろうに――などと思って、彼らの様子ばかりを見守ることに飽きなかった。
— 牧野信一 『鬼涙村』 青空文庫
重い口で栄蔵はお君の様態、お金の仕打、ましては昨夜急に自分が立つ動機となったあのお金の憎体な云い振り、かてて加えて達の不仕末まで聞かされて、いやな事で体中が一杯になって居ると云った。
— 宮本百合子 『栄蔵の死』 青空文庫
お関は尚憎体な笑をたたえて、「ねえ※子さん、東京じゃあ今、と執念く云うので、かくし切れない程気をいら立たせた※子はそれでも声だけは静かに云った。
— 宮本百合子 『お久美さんと其の周囲』 青空文庫
」 兄は憎体に云ひ放つたなり、徳蔵にも挨拶も何もせずに、さつさと何処かへ行つてしまひました。
— 芥川龍之介 『雛』 青空文庫