昃
昃
名詞
標準
文例 · 用例
潮や節や月の盈昃や、此等の點から觀察して、或潮の或時は何樣であるとか、或節の或場合は何樣であるとか、或月齡の時は何樣であるとか云ふことを、氣の張弛の上に就て説きたくは思ふが、胸裏の祕として予の懷いて居るものは有つても、敢て人前に提示するまでには内證が足らぬから言はぬ。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
カン/\日の照付るのを嫌ツて、由三は何時か日の昃ツた側を歩いてゐた。
— 三島霜川 『昔の女』 青空文庫
北側だけに、山腹にはおおく日が昃っていた。
— 若山牧水 『みなかみ紀行』 青空文庫
久しく自然主義の淤泥にまみれて、本来の面目を失してゐた人道が、あのエマヲのクリストの如く「日|昃きて暮に及んだ」文壇に再姿を現した時、如何に我々は氏と共に、「われらが心|熱し」事を感じたらう。
— 芥川龍之介 『あの頃の自分の事』 青空文庫
日が昃って午後になり、折々はフランスの海岸が見えるくらいに澄みわたっていた空気が、再び霧と水蒸気とを含んで来るにつれて、ロリー氏の思いもまた曇って来たようであった。
— 上巻 『二都物語』 青空文庫
白雲の餅の如しや秋の天あの雲の昃り来るべし秋の晴十月十四日 七宝会。
— 高浜虚子 『六百句』 青空文庫
美女の前に語る男の恐ろしい罪「丈太郎様、これは何うしたことで御座いましょう」 先刻、同心相沢半助を追い返した若い女は、打って変った物優しい調子で、斯う若い男の顔を見上げました、片手は畳に落して、片手に胸を抱くように、大きい島田が揺れると、すぐれて美しい顔が昃ります。
— 第五夜 悪魔の反魂香 『新奇談クラブ』 青空文庫
自分の舟は比較的岸に近くおり、供舟はやや向うに漕出しているのであろうか、半ば昃った水の上に、供舟の人たちが夕日を浴びているのが見える。
— 柴田宵曲 『古句を観る』 青空文庫