幻辞.com

蠣殻

かきがら
名詞
1
標準
文例 · 用例
」 と出額をがッくり、爪尖に蠣殻を突ッかけて、赤蜻蛉の散ったあとへ、ぼたぼたと溢れて映る、烏の影へ足礫。
泉鏡花 海異記 青空文庫
……その仔細を尋ぬれば、心がらとは言いながら、去る年、一|膳飯屋でぐでんになり、冥途の宵を照らしますじゃ、と碌でもない秀句を吐いて、井桁の中に横|木瓜、田舎の暗夜には通りものの提灯を借りたので、蠣殻道を照らしながら、安政の地震に出来た、古い処を、鼻唄で、地が崩れそうなひょろひょろ歩行き。
泉鏡花 草迷宮 青空文庫
老妓だけを東京へ返し、わたし達はめい/\相手としての芸妓を一人ずつ連れ、その夜から八幡、船橋、行徳というような都人の思い及ばぬ平素で牡蠣殻の臭いのする海村を二三日遊び廻った。
岡本かの子 生々流転 青空文庫
蠣殻を載せた板屋根、船虫の穴だらけの柱、潮風に佗びてはいるが、此の辺の漁師の親方の家とて普通の漁師の家よりはやや大型である。
岡本かの子 取返し物語 青空文庫
越えて三歳になる時、母親は蠣殻町の贔屓客に、連児は承知の上|落籍されて、浜町に妾宅を構えると、二年が間、蝶吉は、乳母日傘で、かあちゃん、かあちゃんと言えるようになった。
泉鏡花 湯島詣 青空文庫
さて、お肴には何がある、錦手の鉢と、塗物の食籠に、綺麗に飾って、水天宮前の小饅頭と、蠣殻町の煎豌豆、先生を困らせると昼間いったその日の土産はこれで。
泉鏡花 式部小路 青空文庫
総六は、崖の、と呼ぶ、熱海の街を突切って、磧のような石原から浪打際へ出ようとする、傍の蠣殻屋根、崖の上の一軒家の、年老いた漁師であるが、真鶴崎へ鰹の寄るのも、老眼で見えなくなったと、もう鈎の棹は持って出ず、昼は人仕事の網の繕、合間には客を乗せて、錦の浦遊覧の船を漕ぐのが活計。
泉鏡花 わか紫 青空文庫
深川側は既に説けり、日本橋側にありては仙台堀の対岸に神田川に達するの一水西北に入るあり、(既説)中洲の背後より箱崎と蠣殻町との間に存する一水あり、油堀と大川との会するところより下流に豊海橋の下を潜りて西北に入る一水あり。
幸田露伴 水の東京 青空文庫