飲干
いんほし
名詞
標準
文例 · 用例
時に一碗の茶を未だ飲干さなかった、先生はツト心着いて、いぶかしげな目で、まず、傍なる少年の並んで坐った背を見て、また四辺を※したが、月夜の、夕日に返ったような思いがした。
— 泉鏡花 『悪獣篇』 青空文庫
風早は決するところ有るが如くに余せし茶をば遽に取りて飲干し、「然し間であるのが幸だ、押掛けて行つて、昔の顔で一つ談判せうぢやないか。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
このお酒も、祝つて私は飲みます」 涙|諸共飲干して、「あなた、一つお酌して下さいな」 注げば又|呷りて、その余せるを男に差せば、受けて納めて、手を把りて、顔見合せて、抱緊めて、惜めばいよいよ尽せぬ名残を、いかにせばやと思惑へる互の心は、唯それなりに息も絶えよと祈る可かめり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
ポケットに忍ばせていたメントール酒の残りをグッと一息に飲干して、背筋を匐い上る胴震いと共にホーッと熱い呼吸を吹いた。
— 夢野久作 『戦場』 青空文庫
それでは御酒でもと妻君は徳利を取上げたので、それをも辞義してはと、前のを飲干して一杯受けた。
— 田山花袋 『重右衛門の最後』 青空文庫
奥様は目を閉って一口に飲干して、御顔を胡燵に押宛てたと思うと、忍び音に御泣きなさるのが絞るように悲しく聞えました。
— 島崎藤村 『旧主人』 青空文庫
「という訳で」と書記は冷くなった酒を飲干して、「ところが同僚は極の好人物だもんだで、君どうでしょう、泣寝入さ。
— 島崎藤村 『藁草履』 青空文庫
残少なの水も一滴残さず飲干して了った。
— ガールシン 『四日間』 青空文庫