焼場
やきば
名詞
標準
文例 · 用例
骨拾ふ人に親しき菫かな 焼場に菫が咲いているのである。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
間もなく彼は炭焼場の傍を通りかゝつた。
— 中原中也 『山間秘話』 青空文庫
麓を見ると、塵焼場だという、煙突が、豚の鼻面のように低く仰向いて、むくむくと煙を噴くのが、黒くもならず、青々と一条立騰って、空なる昼の月に淡く消える。
— 泉鏡花 『若菜のうち』 青空文庫
そしてそれを村の焼場で焼いたとき、寺の和尚さんがついていて、「人間の脳味噌の黒焼きはこの病気の薬だから、あなたも人助けだからこの黒焼きを持っていて、もしこの病気で悪い人に会ったら頒けてあげなさい」 そう言って自分でそれを取り出してくれたというのであった。
— 梶井基次郎 『のんきな患者』 青空文庫
殺風景な病室の粗末な寝台の上で最期の息を引いた人の面影を忘れたのでもない、秋雨のふる日に焼場へ行った時の佗しい光景を思い起さぬでもないが、今の平一の心持にはそれが丁度覚めたばかりの宵の悪夢のように思われるのである。
— 寺田寅彦 『障子の落書』 青空文庫
二人して火を吹くは焼場なりという俗信あり。
— 泉鏡花 『卵塔場の天女』 青空文庫
もう一度舞台に立って、人間界に降りた天人を、地獄、餓鬼、畜生、三途まで奈落へ堕して、……といって、自殺をするほどの覚悟も出来ない卑怯ものだから、冥途へ捷径の焼場人足、死人焼になって、胆を鍛えよう。
— 泉鏡花 『卵塔場の天女』 青空文庫
そこで私は、娘の死体を詰めてある棺をいよいよ焼場へ運ぶと云う一時間ばかり前になってから、夜がまだ明けきらないのと、葬儀人夫がまだ来なかったのを幸いに、棺の中から娘の死体を取出して、仕事場の戸棚の奥へ隠して了った。
— 佐左木俊郎 『三稜鏡』 青空文庫