迷
めい
名詞
標準
文例 · 用例
もちろん翻訳ではあるが、僕は小説というものは、吾々の感じを満足させるようなものはとても出来ないものとキメてしまった、今までは小説についていくらか迷っていたが、とても吾々を満足させる小説は出来得ないものとキメてしまった。
— 伊藤左千夫 『竹乃里人』 青空文庫
予は自ら慰めてこんなことをいうものの、子規子没後は虚子、碧梧桐と歌われているその虚子君の口から、子規子が迷惑なるべくやに思わるといわるることを予ははなはだ口惜しく思うのである、親友に敬意を欠くの恐れがあるからあまり理屈はいうまい、ただ生前先生から聞いた二、三の話を紹介して、世人の判断に任せておく。
— 伊藤左千夫 『竹乃里人』 青空文庫
幽かに言ひし一言あはれ千万無量の思ひを籠めて、まこと闇路に迷ひぬべき事なるを、引受けし我れ其甲斐もなく、世の嗤笑に為しも終らば、第一は亡き妹に対し我が薄井の家名に対し、伯母が身は抑も何とすべき。
— 樋口一葉 『雪の日』 青空文庫
と御声ひくゝ四壁を憚りて、口数すくなき伯母君が思し合はすることありてか、しみじみと諭し給ひき、我れ初めは一向夢の様に迷ひて何ごとゝも思ひ分かざりしが、漸々伯母君の詞するどく。
— 樋口一葉 『雪の日』 青空文庫
斯くまでに師は恋しかりしかど、夢さら此人を良人と呼びて、共に他郷の地を踏まんとは、かけても思ひ寄らざりしを、行方なしや迷ひ、窓の呉竹ふる雪に心|下折れて我れも人も、罪は誠の罪に成りぬ、我が故郷を離れしも我が伯母君を捨てたりしも、此雪の日の夢ぞかし。
— 樋口一葉 『雪の日』 青空文庫
「月の漏るより闇がよい」というのは恋に迷った暗がりの心である。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
しかし、我々はかかる「出来合」の類概念によって取交される flatus vocis に迷わされてはならぬ。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
もっとも私自身も郵便を投函する必要のあるとき自動車の運転手に「郵便函があったら留めてくれ」といおうか「ポストがあったらストップしてくれ」といおうか、どっちがよくわかるだろうかと咄嗟に迷うことがある。
— 九鬼周造 『外来語所感』 青空文庫