魔の手
まのて
表現名詞
標準
evil influence
文例 · 用例
「押へても押へても押へきれない性慾の発作」それはむざむざと彼の若い生命を喰ひつめた悪魔の手であつた。
— 萩原朔太郎 『月に吠える』 青空文庫
それより上に、彼等に魔の手が強く働いていることは、兵士達には分らなかった。
— 黒島伝治 『渦巻ける烏の群』 青空文庫
そんなつもりで、世界中を悪党だらけにするつもりで、一生懸命に書いたらしく、この世界が「悪」ばっかりで固まっている世界だ……神様なんてものは唯、悪魔の手伝いに出て来た位のもんだっていう事を、出来るだけ念入りに説明しているんです。
— 夢野久作 『悪魔祈祷書』 青空文庫
さればこの時の風采は、悪魔の手に捕えられた、一体の善女を救うべく、ここに天降った菩薩に似ず、仙家の僕の誤って廬を破って、下界に追い下された哀れな趣。
— 泉鏡花 『悪獣篇』 青空文庫
第二十二回 海の禍孤島の紀元節――海軍大佐の盛裝――海岸の夜會――少年の劍舞――人間の幸福を嫉む惡魔の手――海底の地滑り――電光艇の夜間信號 二|月十一|日、待に待つたる紀元節の當日とはなつた。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
斯う考へると、實に愉快で/\堪らぬ、今や吾等の眼には、たゞ希望の光の輝くのみで、誰か人間の幸福を嫉む惡魔の手が、斯る時――かゝる間際に兎角大厄難を誘起すものであるなどゝ心付く者があらう。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
……」 だのに、それから、十歩、二十歩とはまだ隔らないうちに、目の下の城下に火が起った――こういうと記録じみる――一眸の下に瞰下ろさるる、縦横に樹林で劃られた市街の一箇処が、あたかも魔の手のあって、森の一束を蒼空へ引上げたような煙が濛々と揚って、流るる藍色の川を切って暗くした。
— ――(前題――楊弓) 『ピストルの使い方』 青空文庫
かかりしほどに身は疲れ、小指の疵の痛苦劇しく、心ばかりは急れども、足|蹌踉いて腰|起たず、気さえ漸次に遠くなりつ、前後も知らでいたりけるを、得三に見出されて、さてこそかくは悪魔の手に斬殺されんとするものなれ。
— 泉鏡花 『活人形』 青空文庫