顫音
せんおん
名詞
標準
文例 · 用例
」異人は“Ha, ha, ha-a-a-a”と最后を顫音でわらった。
— 宮沢賢治 『一九三一年度極東ビヂテリアン大会見聞録』 青空文庫
硝子の閉つた青い街を、濡れに濡れた舗石のうへを、ピアノが鳴る……金色の顫音の潤むだ夜の空気に緑を帯びて消えてゆく。
— 北原白秋 『東京景物詩及其他』 青空文庫
ああ、静かな夜、何処かに幽かに杏仁水のにほひがして疲れた官能が痺れてくる……濡れたあかしやが銀の恐怖に光つて、一ならび青い硝子に反射する――そのほかは声もせぬ通の長い舗石のうへを痺れて了つたピアノの顫音が、ふる雪の断片が、活動写真のまたたきのやうに音もなく瓦斯の光に顫へてゐる。
— 北原白秋 『東京景物詩及其他』 青空文庫
ただ置いてきぼりにされた幼い霊が泣いてゐるばかり、金の絃の顫音さへはてはやんで了つた。
— 北原白秋 『桐の花』 青空文庫
されば其光の顫音は悲しく、氏の銅色の額に反射した。
— 木下杢太郎 『北原白秋氏の肖像』 青空文庫
ところが、そのコトリと踏む一歩ごとに、リリリーン、リリリーンと、囁くような美しい顫音が響いてきたのである。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
勿論法水は、人形の置かれてあった室の状況に一抹の疑念を残しているけれども、それは彼自身においても確実のものではなく、すなわち、否定と肯定との境は、その美しい顫音一筋に置かれてあると云っても過言ではない。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
けれども、それと同時に、事件の当初ダンネベルグ夫人が自筆で示したところの、人形の犯行という仮定を、わずかそれ一筋で繋ぎ止めていた顫音の所在が明白になった。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫