蚕飼
かいこかい
名詞
標準
文例 · 用例
ここには石浦というところに大きい邸を構えて、田畑に米麦を植えさせ、山では猟をさせ、海では漁をさせ、蚕飼をさせ、機織をさせ、金物、陶物、木の器、何から何まで、それぞれの職人を使って造らせる山椒大夫という分限者がいて、人なら幾らでも買う。
— 森鴎外 『山椒大夫』 青空文庫
吉田屋は其一つ、兎角商売も休み勝ち、客間で秋蚕飼ふ程の時世と変りはてた。
— 島崎藤村 『破戒』 青空文庫
九十九折けはしき坂を降り来れば橋ありてかゝる峡の深みにおもはぬに村ありて名のやさしかる小雨の里といふにぞありける蚕飼せし家にかあらむを壁を抜きて学校となしつ物教へをり学校にもの読める声のなつかしさ身にしみとほる山里過ぎて 生須村を過ぎると路はまた単調な雑木林の中に入った。
— 若山牧水 『みなかみ紀行』 青空文庫
蚕飼する時節は長閑に感ぜらるる者なるに、この歌前半の長閑なるに似ず、後半は長閑に感ぜられず、これがために趣味少きにやと存候。
— 正岡子規 『人々に答ふ』 青空文庫
昨年あたりから村内でも稚蚕飼育に手間のかからぬトタン箱飼育が流行ってゐたからトタン屋商売は大当りだ。
— 金田千鶴 『夏蚕時』 青空文庫
「へえまあお蚕飼ひはつくづく厭ァになつた!
— 金田千鶴 『夏蚕時』 青空文庫
その夜自分と大内は吉沼村の農家から俵を一俵持出し、畠の中で袋に入れかえ二人ともはだしになり蚕飼村へ行った、“今晩は今晩は”と何度もよんだが中から返事がない。
— その五 衆生開眼 『安吾人生案内』 青空文庫
美しき人や蚕飼の玉襷明治三十四年帷子に花の乳房やお乳の人明治三十四年山寺の宝物見るや花の雨明治三十五年肌脱いで髪すく庭や木瓜の花明治三十五年打水に暫く藤の雫かな明治三十五年?
— 高浜虚子 『五百句』 青空文庫