陋居
ろうきょ
名詞
標準
文例 · 用例
御承知の大雅堂でも今でこそ大した画工であるがその当時|毫も世間向の画をかかなかったために生涯真葛が原の陋居に潜んでまるで乞食と同じ一生を送りました。
— 夏目漱石 『道楽と職業』 青空文庫
「A――にゐた時分……」と、彼女は、以前彼の故郷でない辺鄙な海村に彼と陋居した頃の夏の海の話に移らうとしたが、そこではまた彼のことを挟まなければならないことに気づいて、一寸どぎまぎしながら、一言、「あそこの海は、おだやかで好かつたわよ。
— 牧野信一 『秋晴れの日』 青空文庫
それに先生の下宿を訪ねて見ると、独身のわびしげな陋居の中で、「今の日本にとっては」などと言われるのが、大小の比較がとれぬ滑稽な気がした。
— 倉田百三 『光り合ういのち』 青空文庫
むかし、大川の河風にふかれて船の上で昼寝をした夢をしのびながら、陋居に、お角力の膝を枕にして、やさしく撫でられながら彼女の生涯は終った。
— 長谷川時雨 『勝川花菊の一生』 青空文庫
まだ燈火もつけずに、牛込では、陋居の主人をかこんでお仲間の少壮文人たちが三五人談話の最中で、私がまだ座につかないうちにたれかが、「須磨子が死にました」と夕刊を差出した。
— 長谷川時雨 『松井須磨子』 青空文庫
米次郎がその愛宕下の陋居で、脳卒中で亡くなったのは、明治二十八九年ごろだった。
— 堀辰雄 『花を持てる女』 青空文庫
大正十三年甲子の歳仲夏荷風病客麻布窮巷の陋居にしるす。
— 永井荷風 『「麻布襍記」叙』 青空文庫
其陋居に一月二十八日河北新報社の村上辰雄君が來訪、「晩翠放談」を刊行しようとの厚意であつた。
— 土井晩翠 『「晩翠放談」自序』 青空文庫