糸切り
いときり
名詞
標準
文例 · 用例
そして堰を切ったように涙が流れ出ようとするのを糸切り歯でかみきるばかりにしいてくいとめた。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
」 早苗はその時、お悦の糸切り歯が怖ろしく思われたほど、彼女は退っ引きならぬ土壇場に立たされてしまった。
— 小栗虫太郎 『地虫』 青空文庫
上の一本の糸切り歯であった。
— 国枝史郎 『神州纐纈城』 青空文庫
たとえばその人の足の踵が、桜貝のような色をしていたというので、旦那をすててその人と逃げたり、その人が笑うと糸切り歯の端が、真珠のように艶めくというので、許婚をすててその人と添ったり、おおよそ女ってそんなものだよ。
— 国枝史郎 『犬神娘』 青空文庫
笑うと、ちょいと開いた唇の間から、真白な糸切り歯がニッと出てくるのが、また何とも云えない程可愛らしく見えた。
— 海野十三 『恐しき通夜』 青空文庫
鏡花式とある人は一口にいふ、それは重に侠などこか、奴の小萬式の、たてひきの強い、ぐつとくる癪なのを糸切り齒で噛みころして、柳眉をすこしあげてポンと投出したやうな物言ひをする女人をさすが、先生の好いのはそんなことではありません。
— 長谷川時雨 『水色情緒』 青空文庫
それから人参を糸切りにして糸蒟蒻と前の牛蒡と三品を一旦|湯煮ておいてそれへ椎茸を加えて鰹節の煮汁と味淋と醤油とで美味しく煮ます。
— 秋の巻 『食道楽』 青空文庫
第三十八 豚のそぼろ飯 は豚のロース肉を糸切りにして塩でよく揉んでザット湯煮て牛蒡に木クラゲに糸蒟蒻にその他時の野菜物の細かく刻んだものと一緒に醤油とお酒と少しの砂糖とで二時間ほど汁沢山に煮ます。
— 秋の巻 『食道楽』 青空文庫