餒
餒
名詞
標準
文例 · 用例
余の事にしくしく泣き出すと、こりゃ餒うて口も利けぬな、商売品で銭を噛ませるようじゃけれど、一つ振舞うて遣ろかいと、汚い土間に縁台を並べた、狭ッくるしい暗い隅の、苔の生えた桶の中から、豆腐を半挺、皺手に白く積んで、そりゃそりゃと、頬辺の処へ突出してくれたですが、どうしてこれが食べられますか。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
暑い時節じゃで、何ともなかろが、さぞ餒かろうで、これでも食わっしゃれって。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
(よした、よした、大餒えに餒えている。
— 泉鏡花 『開扉一妖帖』 青空文庫
が、何分にも、餒れた黄肌鮪鬢長鮪が可恐しい。
— 泉鏡花 『雪柳』 青空文庫
それに時間がたつに従ってだんだん餒じくもなって来た。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
気が餒えきって来ると、笹村はそっとにげるように宿の門を出た。
— 徳田秋声 『黴』 青空文庫
お銀が勝手の方でといで来た米を入れた行平を火鉢にかけて、粥を拵えていると、子供は柔かい座蒲団のうえに胡坐をかいて、健かな餒えを感ずる鼻に旨い湯気を嗅ぎながら待っていた。
— 徳田秋声 『黴』 青空文庫
初めて商売に出て、その男を知った時のことなどが、情味に餒えているような浅井の耳に、また新しく響いた。
— 徳田秋声 『爛』 青空文庫