一分の隙もない
いちぶのすきもない
表現形容詞
標準
without any weak spot
文例 · 用例
寿枝はそんな圭介の素振りを見て、何か心に覚悟を決めたらしく一分の隙もないきつとした顔を見せてゐた。
— 織田作之助 『六白金星』 青空文庫
この点において何事も深く考え細さに究め右から左から八方から見て一分の隙もないまでに作り上げた二葉亭の原稿は新聞材料としては勿体なさ過ぎていた。
— 内田魯庵 『二葉亭四迷の一生』 青空文庫
何んしろ、作業と作業の間に一分の隙もない程に連絡がとれて居り、職場々々の職工たちは、コンヴェイヤーに乗って徐々に動いて来る罐が、自分の前を通り過ぎて行く間に割り当てられた仕事をすればいゝというようになってしまったのですから、たまりません。
— 小林多喜二 『工場細胞』 青空文庫
秋まつり鬱金の帯し螺を鳴らし信田の森を練るは誰が子ぞ 一分の隙もない渾然として玉の様な歌であるが、なほ古い御手本がなくはない。
— 平野萬里 『晶子鑑賞』 青空文庫
」と、気の違ったように吠え出しましたから、ふと気がついてふり返えると、あの狡猾な土蜘蛛は、いつどうしたのか、大きな岩で、一分の隙もないように、外から洞穴の入口をぴったりふさいでしまいました。
— 芥川龍之介 『犬と笛』 青空文庫
お幸の蛇のような聡明が神経の端々にしみわたってしっかり喰いとめているような、一分の隙もないしっかりした弾力性のある、肉の発育した美しさであった。
— 地に潜むもの 『地上』 青空文庫
産まれながらの駕籠舁き稼業で息杖を放なさぬはだか武兵衛は、自然と棒の使い方も覚えて、ヤッと構えた身体にはそれこそ一分の隙もない。
— 国枝史郎 『蔦葛木曽棧』 青空文庫
その、渡り職人らしくない、一分の隙もない喬之助の体配りが、また、壁辰をして、これは確かに武士、武士も武士、大きに腕の立つ武士にきまったと、疑いから確信へ、はっきり思わせたのだった。
— 新版大岡政談 『魔像』 青空文庫