無記
むき
名詞
標準
文例 · 用例
理想主義が伝統に敗れたとき彼の理智が無記銘な現在から彼の生命を奪ってしまった。
— 吉行エイスケ 『地図に出てくる男女』 青空文庫
もとより真の已達の境界には死生の間にすら関所がなくなっている、まして覚めているということも睡っているということもない、坐っているということと起きているということとは一枚になっているので、比丘たる者は決して無記の睡に落ちるべきではないこと、仏説離睡経に説いてある通りだということも知っていなかった。
— 幸田露伴 『観画談』 青空文庫
もとより真の已達の境界には死生の間にすら関所が無くなつてゐる、まして覚めて居るといふことも睡つてゐるといふことも無い、坐つて居るといふことと起きて居るといふこととは一枚になつてゐるので、比丘たる者は決して無記の睡に落ちるべきでは無いこと、仏説離睡経に説いてある通りだといふことも知つて居なかつた。
— 幸田露伴 『観画談』 青空文庫
却説……斯様にして屍体台帳の書換えを終りました若林博士は、その台帳を無記入の屍体検案書と一緒に、無雑作に机の上に投出しました。
— 夢野久作 『ドグラ・マグラ』 青空文庫
ほとんど食事も進みかねておりましたのでございますが、その折柄、去る九日の午前出勤中に外務省の機密局長M男爵閣下宛、配達致して参りました封書中に、夫の筆跡に相違ない無記名のもの一通を見付けましたので、思わず胸を轟かせました。
— 夢野久作 『暗黒公使』 青空文庫
私は振出人ヒギンスの署名で、無記名一千円の小切手を書かせられた。
— 松本泰 『日蔭の街』 青空文庫
早々壺を渡して然るべし」 無記名です……こう書いてある。
— こけ猿の巻 『丹下左膳』 青空文庫
凡てのことが善でも無ければ惡でも無い、眞でも無ければ僞でも無い、即ち無記のものであると見る時に初めて「アタラクシア」の境界に到達することが出來る。
— 朝永三十郎 『懷疑思潮に付て』 青空文庫
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無記 とは、仏教において、釈迦がある問いに対して、回答・言及を避けたことを言う。仏説経典に回答内容を記せないので、漢語で「無記」と表現される。主として形而上学的な、「生命と身体の関係」「修行完成者(如来)の死後のあり方」などの我の愛着につながり輪廻からの解脱・涅槃(二度と生まれ変わらないこと)の妨げとなる事柄、もしくは「世界の存続期間や有限性」などの解脱を目指す上で意味をなさない事柄についての問いに対して、このような態度が採られた。
出典: 無記 — ウィキペディア / CC BY-SA 4.0