穿物
穿物
名詞
標準
文例 · 用例
けれども、顔で覗いてその土間へお入んさすった時は、背後向きでね、草履でしょう、穿物を脱いだのを、突然懐中へお入れなさるから、もし、ッて留めたんですが、聞かぬ振で、そして何です、そのまんま後びっしゃりに、ずるッかずるッかそこを通って、) と言われた時は、揃って畳の膝を摺らした。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫
…… おや、無面目だよ、人の内へ、穿物を懐へ入れて、裾端折のまんま、まあ、随分なのが御連中の中に、とそう思っていたんですがね、へい、まぐれものなんでございますかい。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫
お千も慌しかったと見えて、宗吉の穿物までは心着かず、可恐しい処を遁げるばかりに、息せいて手を引いたのである。
— 泉鏡花 『売色鴨南蛮』 青空文庫
これにて礼服着用の立派な婦人|一人前、粧飾品なり、衣服なり、はた穿物なり、携帯品なり、金を懸くれば際限あらず。
— 泉鏡花 『当世女装一斑』 青空文庫
」 と胸を圧して、馴れぬ足に、煩はしかりけむ、穿物を脱ぎ棄てつ。
— 泉鏡花 『紫陽花』 青空文庫
旦那が役所へ通ふ靴の尖は輝いて居るけれども、細君の他所行の穿物は、むさくるしいほど泥塗れであるが、惟ふに玄關番の學僕が、悲憤慷慨の士で、女の足につけるものを打棄つて置くのであらう。
— 泉鏡花 『山の手小景』 青空文庫
其の穿物が重いために、細君の足の運び敏活ならず。
— 泉鏡花 『山の手小景』 青空文庫
此の奧に住める人の使へる婢、やつちや場に青物買ひに出づるに、いつも高足駄穿きて、なほ爪先を汚すぬかるみの、特に水溜には、蛭も泳ぐらんと氣味惡きに、唯一重森を出づれば、吹通しの風砂を捲きて、雪駄ちやら/\と人の通る、此方は裾端折の然も穿物の泥、二の字ならぬ奧山住の足痕を、白晝に印するが極惡しなど歎つ。
— 泉鏡花 『森の紫陽花』 青空文庫