渡道
とどう
名詞
標準
文例 · 用例
渡道前、秋田の半農半漁の家に少年時代を過した彼は、浜の仕事はなんだっておんなじこととたかをくくっていたのだ。
— 島木健作 『鰊漁場』 青空文庫
私は先刻この野にかかってからずっと続いて来ている物静かな沈んだ心の何とはなしに波だつのを覚えながら、暫くその小さな道標の木を見て立っていたが、K―君が早や四五間も沢渡道の方へ歩いているのを見ると、其儘に同君のあとを追うた。
— 若山牧水 『みなかみ紀行』 青空文庫
私は先刻この野にかゝつてからずつと續いて來てゐる物靜かな沈んだ心の何とはなしに波だつのを覺えながら、暫くその小さな道標の木を見て立つてゐたが、K―君が早や四五間も澤渡道の方へ歩いてゐるのを見ると、其の儘に同君のあとを追うた。
— 若山牧水 『みなかみ紀行』 青空文庫
知人も疎開したり死亡したりしていて御希望に添うような便宜は得にくい、御主人によくお話になり、御渡道はお見合わせになるが然るべく、という意味が書かれていた。
— 宮本百合子 『播州平野』 青空文庫
宮崎君夫婦はもともと一文無しで渡道し、関家に奉公中|貯蓄した四十円を資本とし、拓き分けの約束で数年前此原野を開墾しはじめ、今は十町歩も拓いて居る。
— 徳冨健次郎 『みみずのたはこと』 青空文庫
」 実は彼は内地の郷里に妻子を置いて、渡道したきり、音信不通だが、風のたよりに彼地で妻を迎えて居ると云うことが伝えられて居るのであった。
— 徳冨健次郎 『みみずのたはこと』 青空文庫
」 實は彼は内地の郷里に妻子を置いて、渡道したきり、音信不通だが、風のたよりに彼地で妻を迎へて居ると云ふことが傳へられて居るのであつた。
— 徳冨蘆花 『熊の足跡』 青空文庫
老妻は渡道後は大に健康なりとて自ら畑に出で鍬を取り、蔬菜豆類を作り喰用の助けとして、一日に一銭たりとも多く貯えて又一が手許に送り、牧塲の資本を増加せん事をとて熱心に働き、自らも大快楽なりとて喜び居れり。
— 関寛 『関牧塲創業記事』 青空文庫