櫺
櫺
名詞
標準
文例 · 用例
棟近き山の端かけて、一陣風が渡つて、まだ幽に影の殘つた裏櫺子の竹がさら/\と立騷ぎ、前庭の大樹の楓の濃い緑を壓へて雲が黒い。
— 泉鏡花 『城崎を憶ふ』 青空文庫
自分もよく知らないが、なんでもゆうべの夜中にどこからか帰って来て、縁の下や台所の櫺子窓からぞろぞろと入り込んだものらしいと云った。
— 猫騒動 『半七捕物帳』 青空文庫
かねつけ蜻蛉が、ふわふわと、その時立ったが、蚊帳に、ひき誘われたようにふわりと寄ると、思いなしか、中すいて、塔婆に映って、白粉をちらりと染めると、唇かと見えて、すっと糸を引くように、櫺子の丸窓を竹深く消えたのである。
— 泉鏡花 『露萩』 青空文庫
いと暑き日の午後、われは共同の廣間に出でしに、緑なる蔓草の纏ひ付きたる窓櫺の下に、姫の假寢し給へるに會ひぬ。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
おくみは櫺子の戸を開けてきちんと昼の着物の帯をしめた。
— 鈴木三重吉 『桑の実』 青空文庫
道具を片附けて油手を拭いてゐると、櫺子の外の生垣を籠めてしと/\と青く降る雨に、どこか間近い草の中で、まだ早い蟋蟀が一匹、ひそ/\と青白い糸を引くやうに鳴いてゐる。
— 鈴木三重吉 『桑の実』 青空文庫
何だか汗ばんだやうに暑くろしくなつたおくみは、茶の間の戸棚を開けて、買つときのお菓子の鑵を出すのに、櫺子から来るそよ/\した風が、襟足のあたりに小嬉しいやうであつた。
— 鈴木三重吉 『桑の実』 青空文庫
いつの間にか積もりんしたね」 座敷の櫺子窓をあけて外を眺めていた綾鶴が、中の間の方へ向いて声をかけた。
— 岡本綺堂 『箕輪心中』 青空文庫