引き裂き
ひきさき
名詞
標準
文例 · 用例
そして、陸上で自分の財布を地面へたたきつけ、自分の着ているその無格好な汚れた着物を引き裂き、労働で荒れた、足の踵のような手の皮を引んむいてやりたく思うのであった。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
それを引き裂きでもしていようものなら!
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
そして、筆は遲遲として進まず、意を充たすやうな作は出來上らずに、徒にふえて行くのは苛苛と引き裂き捨てる原稿紙の屑ばかりであつた。
— 南部修太郎 『處女作の思ひ出』 青空文庫
一字書き、一行進めては氣に入らなくなり、不滿になり、厭やになつたりして、私は幾度か原稿紙を引き裂き、幾度か書き出しの稿を改めずにはゐられなかつた。
— 南部修太郎 『處女作の思ひ出』 青空文庫
狂人のような悶えでそれを引き裂き、私を殺すであろう酷寒のなかの自由をひたすらに私は欲した。
— 梶井基次郎 『冬の蠅』 青空文庫
……でも、若しあの人が何時迄もあの赤い小いさな煙突の下に住んでいてくれたなら、あの煙突はまるで最初から飾物でなぞなかったような顔をして、毎日々々煙を吐きつづけたかも知れなかったのに……」 それから彼女はその手紙を幾つにも幾つにも細かく引き裂きはじめたのであった。
— 渡辺温 『赤い煙突』 青空文庫
ある晩なぞ枕頭においた栗栖の写真を見て、彼はいきなりずたずたに引き裂き、銀子の島田を※ったりした。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
そう思うとあり合わせるものを取って打ちこわすか、つかんで引き裂きたいような衝動がわけもなく嵩じて来るのだった。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫