牾
牾
名詞
標準
文例 · 用例
「朝鮮閣」 牴牾しいのはこっちだ、といったふうに寸分違わないように似せてゆく。
— 梶井基次郎 『城のある町にて』 青空文庫
」と聞く身には他事をいううちが牴牾しく、膠もなく続きを促した。
— 泉鏡花 『高野聖』 青空文庫
又身の欲する所と心の欲する所と牴牾するが如き場合、即ち慾と道義心との相爭ふ場合などを省察したるより發したのでも有らう。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
身の欲するところと心の欲する所と牴牾する場合も、詳しく省察すれば碁の爭ひの如きもので、交替爭鬪である、同時爭鬪では無い、一室一主である、一室二主では無い。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
黄昏に似た薄暗さの底に、三人はしばらくプログラムを見ていたが、葉子は中に庸太郎という隔てのあるのを牴牾しがるようなふうもしていた。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
お島はどこか自分の死を想像させるような場所を覗いてみたいような、悪戯な誘惑に唆られて、そこへ降りて行ったのであったが、流れの音や、四下の静さが、次第に牾しいような彼女の心をなだめて行った。
— 徳田秋声 『あらくれ』 青空文庫
人が悪いっていうんでもないけれど、人情はないんですね」「早くあの地面を自分のものに書きかえておくようにしなくちゃ駄目だよ」 小野田は、お島の投遣なのを牾しそうに言った。
— 徳田秋声 『あらくれ』 青空文庫
」 三度目に電話をかけようとしてゐる時、下宿にゐる好子の女中から電話がかゝつて来たので、彼は途中どこかで青年たちと飯でも喰つてゐる彼女が、彼を呼び出さうとして、電話が切れたものだと想像して、電話といふものゝ牾かしさを感じなから、二度目に来るのを待つてゐた。
— 徳田秋聲 『水ぎわの家』 青空文庫