藕糸
藕糸
名詞
標準
文例 · 用例
他なし、渠はおのが眼の観察の一度達したるところには、たとい藕糸の孔中といえども一点の懸念をだに遺しおかざるを信ずるによれり。
— 泉鏡花 『夜行巡査』 青空文庫
この「ガ」奴が、藕糸孔中蚊睫の間にも這入りそうなこの眇然たる一小「ガ」奴が、眼の中の星よりも邪魔になり、地平線上に現われた砲車一片の雲よりも畏ろしい。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
彼が藕糸歩雲の履を穿き鎖子黄金の甲を着け、東海竜王から奪った一万三千五百|斤の如意金箍棒を揮って闘うところ、天上にも天下にもこれに敵する者がないのである。
— ―沙門悟浄の手記― 『悟浄歎異』 青空文庫
昔し阿修羅が帝釈天と戦って敗れたときは、八万四千の眷属を領して藕糸孔中に入って蔵れたとある。
— 夏目漱石 『一夜』 青空文庫
若人等は、この頃、氏々の御館ですることだと言つて、苑の池の蓮の茎を切つて来ては、藕糸を引く工夫に、一心になつて居た。
— 折口信夫 『死者の書』 青空文庫
ほう/\と切れてしまふ藕糸を、八|合・十二|合・二十合に縒つて、根気よく、細い綱の様にする。
— 折口信夫 『死者の書』 青空文庫
かうして績ぎ蓄めた藕糸は、皆一纏めにして、寺々に納めようと、言ふのである。
— 折口信夫 『死者の書』 青空文庫
藕糸のまるがせが、日に/\殖えて、廬堂の中に、次第に高く積まれて行つた。
— 折口信夫 『死者の書』 青空文庫