聞えよがし
きこえよがし
形容動詞
標準
文例 · 用例
私の文学生活の始めから、おそらくはまた終りまで、ボオドレエルにだけ、ただ、かれにだけ、聞えよがしの独白をしていたのではないのか。
— ――馬をさへ眺むる雪の朝かな―― 『碧眼托鉢』 青空文庫
「これ、少しばかりですけれど……」 むつちりとふやけたやうな手の指先で、帶の間の紙入から五十錢札をぬき出すと、赤帽に手渡しながら、女は聞えよがしの聲で云つた。
— 南部修太郎 『女盗』 青空文庫
旅僧は冷々然として、聞えよがしに風説して惡樣に罵る聲を耳にも入れざりき。
— 泉鏡花 『旅僧』 青空文庫
」と、当惑し切ってもじもじしている茶坊主をつかまえて、殿へも聞えよがしの雑言。
— 太宰治 『新釈諸国噺』 青空文庫
」とおやじに聞えよがしに呟いて、自分で手洗いの水を両手で掬って来て、シャッシャと鉢にかける。
— 太宰治 『禁酒の心』 青空文庫
ううむ、ううむ、と大袈裟に唸りながら、めちや苦茶に鎌を振りまはして、時々、あいたたたた、などと聞えよがしの悲鳴を挙げ、ただもう自分がこのやうに苦心惨憺してゐるといふところを兎に見てもらひたげの様子で、縦横無尽に荒れ狂ふ。
— 太宰治 『お伽草紙』 青空文庫
ううむ、ううむ、と大袈裟に唸りながら、めちや苦茶に鎌を振りまはして、時々、あいたたたた、などと聞えよがしの悲鳴を擧げ、ただもう自分がこのやうに苦心慘憺してゐるといふところを兎に見てもらひたげの樣子で、縱横無盡に荒れ狂ふ。
— 太宰治 『お伽草紙』 青空文庫
家の奥座敷でお辻の死体をそれに入れる時「出し惜しみが急に気張つたのでお辻さんは風邪をひくわい」と兼々気まづかつた親類の一人が、わざと聞えよがしの陰口をきいた。
— 岡本かの子 『老主の一時期』 青空文庫