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嗄れ声

しゃがれごえ
名詞
1
標準
文例 · 用例
絶壁の下なる大深谷からは、霧がすさまじいいきおいで、皺嗄れ声を振り立てて上って来る、近づくほど早くなるかと思うと、端から砕けてサアッと水球を浴びせる、そうして呻りながら、尾根につかまり、槍先へ這いずり上って、犠牲になる生霊もがなと、捜し廻っている。
小島烏水 槍ヶ岳第三回登山 青空文庫
……」 そして、ふたたびダンス場の桃色の迷宮のなかで僕は、嗄れ声のジャズ・シンガーの唱う恋歌に聞き惚れていた。
吉行エイスケ 東京ロマンティック恋愛記 青空文庫
戎橋河畔の新京阪電車の広告塔のヘッド・ライトが、東道頓堀の雑鬧が奏でる都会の嗄れ声に交錯して花合戦の幕が切っておとされた。
吉行エイスケ 大阪万華鏡 青空文庫
それに引き代へ、僕は僅かに持つて生れた池の水ほどの生命を、一生かゝつて撒き散らしてしまつた――」 小布施はいよ/\肉体さへ枯れて行くやうな嗄れ声で、番茶に咽喉を潤しながら語つた。
岡本かの子 花は勁し 青空文庫
わたくしが病気のことだから、強情を張らないでと宥め賺して、その始末をしてやりますと、母は「あー、あ」と嗄れ声を挙げまして、それから絶望したようにくたりとなってわたくしの做す儘に任すのでした。
岡本かの子 生々流転 青空文庫
歩くに疲れて、わたしは舷檣に倚りかかりながら、周囲にひろがっている大氷原に、今しも沈もうとしている太陽の投げる澄明な光りを心から感歎して眺めていると、その夢幻の状態から、わたしは間近にきこえる嗄れ声のために突然われにかえった。
北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃 世界怪談名作集 青空文庫
ところが、君の云うファウスト博士の円は、まさに残った四人を指摘しているんだ」「すると、儂だけは安全圏内ですかな」 その時背後で、異様な嗄れ声が起った。
小栗虫太郎 黒死館殺人事件 青空文庫
こんな不具者がどうして……」と辛くも嗄れ声を絞り出した。
小栗虫太郎 黒死館殺人事件 青空文庫