楚歌
そか
名詞
標準
文例 · 用例
私が『「いき」の構造』を書いた頃はマルクス主義全盛の頃で、私は四面楚歌の感があった。
— 九鬼周造 『伝統と進取』 青空文庫
楚歌一身に聚りて集合せる腕力の次第に迫るにもかかはらず眉宇一点の懸念なく、いと晴々しき面色にて、渠は春昼寂たる時、無聊に堪えざるものの如く、片膝を片膝にその片膝を、また片膝に、交る交る投懸けては、その都度靴音を立つるのみ。
— 泉鏡花 『海城発電』 青空文庫
楚歌一身に聚りて集合せる腕力の次第に迫るにも関わらず眉宇一点の懸念なく、いと晴々しき面色にて、渠は春昼|寂たる時、無聊に堪えざるもののごとく、片膝を片膝にその片膝を、また片膝に、交る交る投懸けては、その都度靴音を立つるのみ。
— 泉鏡花 『海城発電』 青空文庫
皆口を揃へて醫者になれ/\と口やかましく勸める、其四面楚歌の聲の中に立つて、一年ばかりぶら/″\して居る中に、親父の建てた家も、殘した金も滅茶々々になつて、僕は市井の間に埋つて了つた。
— 三島霜川 『自傳』 青空文庫
田舎丸出しの女中たちの拵えてくれる食膳に向かうことも憂鬱だったが、出癖もついていたせいで、独りで書斎にいると、四面|楚歌のなかで生きている張り合いもないような気もした。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
引き続き四面|楚歌の庸三は、若い愛人を失った年寄同志のうえに、何か悪いデマが飛びそうなので、いつも礼儀を正しく警戒したが、その晩も猪口を口にする気にもならず、間もなく三人でそこを引き揚げた。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
さりとて今さら中止するわけにも行かないので、四面楚歌のうちに一週間ほども興行をつづけていると、警視庁でも輿論の沸騰にかんがみて、さらに劇場に対して上演中止を命令した。
— 岡本綺堂 『明治劇談 ランプの下にて』 青空文庫
四面の楚歌は項羽の陣中にまで及んだ。
— 牧野信一 『悲しき項羽』 青空文庫