待ち顔
まちがお
名詞
標準
文例 · 用例
竹青に手をひかれて奥の部屋へ行くと、その部屋は暗く、卓上の銀燭は青烟を吐き、垂幕の金糸銀糸は鈍く光って、寝台には赤い小さな机が置かれ、その上に美酒|佳肴がならべられて、数刻前から客を待ち顔である。
— ――新曲聊斎志異―― 『竹青』 青空文庫
精養軒の玄関にボーイが一人立って人待ち顔に入り口のほうをながめている。
— 寺田寅彦 『柿の種』 青空文庫
ジャンとピエールは朝から何がはじまったのかと思って、まどをあけて往来を見ると、年寄りも子どもも男も女も皆戸外に飛び出して、町の門の方を見やりながら物待ち顔に、口々にさけんでいます。
— 有島武郎 『かたわ者』 青空文庫
そうでなくても小さいお公卿さまが、いっそうからだを小さく固めて、そこの座敷のそれもすみのほうにちんまりとお上品にかしこまりながら、だれか人待ち顔に、いたってぼんやりとしていたものでしたから、あっけにとられてきき尋ねました。
— 袈裟切り太夫 『右門捕物帖』 青空文庫
不思議な船が、大川岸に四|艘、小堀の中に三|艘、人待ち顔につないであるのです。
— 首つり五人男 『右門捕物帖』 青空文庫
起きるから右門はしきりとなにか人待ち顔でいましたが、と、それを裏書きするように、あわただしく表のかたにあたって、右門のお組屋敷を訪れた人の足音がありました。
— 村正騒動 『右門捕物帖』 青空文庫
椽側には御誂向に一脚の籐の椅子が、人待ち顔に、しめっぽく据えてある。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
洋服を着た一人の男が宿の裏口へ来て、それから横手の塀の外へ廻って、人待ち顔にうろうろしていると、いつの間にかお留がぬけ出して行ったんです。
— 岡本綺堂 『探偵夜話』 青空文庫