遣り場
やりば
名詞
標準
文例 · 用例
「…………」「…………」 感情が衝き上げて来て、その遣り場をしきりに私の胸に目がけながら、腰の辺で空に藻掻かしている娘の両方の手首を私は握った。
— 岡本かの子 『河明り』 青空文庫
京子は一旦は眠りについたが、遣り場のない不満な焦慮怨恨の衝撃にせき立てられて直きに眼が醒めた。
— ――二つの連作―― 『春』 青空文庫
その当時晴代は霊の脱殼のやうな体の遣り場がなくて、責任を負はされてゐる両親や多勢の妹たちがなかつたら、きつとあの時死んでゐたらうと思はれる程だつた。
— 徳田秋声 『のらもの』 青空文庫
私はひとりで芝居をしてたやうな、間の抜けた感じを味はひながら、急にあの人に投げて居る体の遣り場に困つてしまふ。
— 水野仙子 『脱殼』 青空文庫
」 熊城は憤懣の遣り場を法水に向けて、毒づいた。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
護衛という点では、あの魔法博士に指一本差させやしませんよ」 法水がそう云い終ると同時に、クリヴォフ夫人は憤懣の遣り場を露骨に動作に現わして、性急しく二人を促し立ち上った。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
一旦|柄へかけた手の遣り場がないといふならば、おゝ、さうぢや。
— 岡本綺堂 『番町皿屋敷』 青空文庫
同樣に、煙草が無くて手の遣り場に困る事に氣が附いた。
— 石川啄木 『葉書』 青空文庫