病父
びょうふ
名詞
標準
文例 · 用例
大人しい青年で、親にも告げずに身に佩びては悪かろうと、豎牛を通じて病父にその名誉の事情を告げ玉環を見せようとした。
— 中島敦 『牛人』 青空文庫
世間あるいは強いてこれを望む者もあるべしといえども、その迂闊なるは病父母をして健康無事の子を生ましめんとするに異ならず、我輩の知らざる所なり。
— 福沢諭吉 『日本男子論』 青空文庫
病父の恢復は、祈るだけ祈ったけれど、いまはもうその甲斐もなく、追っつけ、こんどは、冥福を祈らなければならないようになるであろう……。
— こけ猿の巻 『丹下左膳』 青空文庫
『金にもならぬ和歌ばかり作つてゐて一體お前はこの若山家をどうする氣か』と云つて、先頃まで歸つてゐた郷里の家で、病父の枕許で、年とつた母や親戚たちから私は責められた。
— 島三題 『樹木とその葉』 青空文庫
[自注18]河村さん――島田の宮本の家の向いの一家で、病父がその人のリヤカーにのせてもらって相撲や芝居見物に行ったこともある。
— 一九三七年(昭和十二年) 『獄中への手紙』 青空文庫
魯迅は「そこの家の虐遇に堪えかねて間もなく作人をそこに残して自分だけ杭州の生家へ帰った」そして、病父のためにえらい辛酸を経験した。
— 宮本百合子 『兄と弟』 青空文庫
どんな娘だか知らないが、病父を抱へて困つてゐるのが、色をひさがなければならないのは哀れである。
— 水上滝太郎 『大阪の宿』 青空文庫
そんな心持の多分にある三田の想像では、おみつつあんといふ娘が、硯友社時代の小説にでも出て來る、親孝行で優しくて、身を賣つて病父の藥を購ふといふやうな、古風な哀れつぽさで取卷かれてゐる女主人公になつてしまつた。
— 水上滝太郎 『大阪の宿』 青空文庫