端舟
はしぶね
名詞
標準
文例 · 用例
敦賀は良津ゆゑ苦勞はないが、金石の方は船が沖がかりして、波の立つ時は、端舟で二三里も揉まれなければ成らぬ。
— 泉鏡太郎 『麻を刈る』 青空文庫
冬分は往々敦賀から來た船が、其處に金石を見ながら、端舟の便がないために、五日、七日も漾ひつゝ、果は佐渡ヶ|島へ吹放たれたり、思切つて、もとの敦賀へ逆戻りする事さへあつた。
— 泉鏡太郎 『麻を刈る』 青空文庫
左右の舷側に吊した四隻のカッター端舟はセイゼイ廿人も乗れる位のもので在ったろうか。
— 夢野久作 『爆弾太平記』 青空文庫
そのうちに左舷の船尾から猛烈な悲鳴が湧き起ったから、振り返ってみると、今しも人間を山盛りにして降りかけた端舟が、操作を誤って片っ方の吊綱だけ弛めたために、逆釣りになってブラ下がった。
— 夢野久作 『爆弾太平記』 青空文庫
その吾々が仕事をしている二三|間向うには、端舟の釣綱が二本、中途から引っ切れたままブラ下がっていた。
— 夢野久作 『爆弾太平記』 青空文庫
そん時に漂流端舟に這い上ってハンカチを振ったのが彼小僧のSOSの振出しだそうですがね。
— 夢野久作 『難船小僧』 青空文庫
江戸の方面とても無論それと同じ気圧に支配されているのですから、その日の亥の刻に江戸橋を立つ木更津船は、あえて日和を見直す必要もなく、若干の荷物と二十余人の便乗の客を乗せて、碇を揚げようとする時分に、端舟の船頭が二人の客を乗せて、大童で漕ぎつけました。
— 安房の国の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
潮が上げて来たものでもなく、雨が降り出したわけでもなく、水の瀬が開ける音がしたのは一隻の端舟が、櫓の音も忍びやかに両国橋の下を潜って、神田川へ乗り込み、この辺の河岸に舟を着けようとしているものらしい。
— 小名路の巻 『大菩薩峠』 青空文庫