幻辞.com

遅蒔き

おそまき
名詞
1
標準
文例 · 用例
それと同時に火のうへにゐるやうな日本といふ島国の不安さも貧寒さも思はれる訳で、日本が遅蒔きながら大陸進出を目論むのも無理からぬことではある。
徳田秋聲 佗しい放浪の旅 青空文庫
遅蒔きながら其の御祝儀を述べるやら、御無沙汰のお詫びをするやら、話はなかなか尽きなかったが、なんにしても先生も無事、奥さんも無事、それを実際に確かめることが出来て、わたしもまず安心した。
岡本綺堂 深見夫人の死 青空文庫
予在外中、維新前外国通商およびその商品について毎度調査した結果、右にほぼ述べた通り、媚薬とか房中剤とか実際不緊要な物に夥しく金銀を外邦へ失い居ると知り、遅蒔きながら何とかその腹癒せもならぬものかと、左思右考してわずかに一策を得た。
馬に関する民俗と伝説 十二支考 青空文庫
切角人格的に尊敬し得る異性に出会い、まことに愛されもし、漸々遅蒔きながら人生が実りかけようとすると、今度は予想外の死で、万事は、動揺と不安とへの逆転になってしまいました。
――近頃思った事―― ひしがれた女性と語る 青空文庫
で、海老床の若い者や藤吉部屋の勘弁勘次や、例の近江屋の隠居なぞが世話人株で、合点長屋を中心に大供子供を駆り集め遅蒔きながら、吉例により今日は品川へ潮干狩りにと洒落こんだのである。
怪談抜地獄 釘抜藤吉捕物覚書 青空文庫
で俺は今日から宗旨を変えて、遅蒔きながら左膳を真似て殿にお太鼓をたたくつもり、心の変った俺にとっては、石地蔵のようなそちはかえって邪魔というのじゃ。
国枝史郎 蔦葛木曽棧 青空文庫
辰さんはこちらに用がふえて来てることが多く、合間には畑の野菜物、遅蒔きの茄子や大根の手入れをしていた。
豊島与志雄 女心の強ければ 青空文庫
つまり、新家庭を抛棄して、出家入道の身となったのは、遅蒔きながら朝霧の純情に殉じたものだ。
山科の巻 大菩薩峠 青空文庫